2017-08

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    (番外編)パティ・スミス


    A day doesn’t go by where I don’t create something.
    何かをクリエイトしないままに時間が過ぎるって日はないの。


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    11月18日、近所の書店でジム・キャロルの遺作小説(“The Petting Zoo”)の出版を記念して、彼の友人のパティ・スミスが彼の思い出を語り、レニー・ケインをギタリストに迎え、何曲か歌った。

    イベントの1時間前に会場に行ったが、既に200席以上は埋まり、始まったときには、特別に設けられた後部席も含めて、500人以上の聴衆が集まった。

    トレード・マークの黒いジーンズに黒いジャケット。胸元までの長さの白髪交じりのロングヘアでノーメイク。1970年代にボーイッシュな体型だったパンクロック・シンガーも今や60代半ば。体型はさすがにふっくらとなったとはいえ、雰囲気はちっとも変わっていない。聴衆は20代、30代から、彼女と同世代の人まで幅広い年齢層。

    ジム・キャロルは、去年の9月11日、机に向かって仕事をしているときに心臓発作で他界したこと、彼は気分屋だったが、遺作となった小説に力を注いでいたことなどを語った。

    ところで、パティ・スミスが写真家のロバート・メイプルソープとの交遊を書いた回想記 “Just Kids”は13日、権威ある米国図書協会賞を受賞したばかり。その本にサインを求める人も多かった。

    “Just Kids”は若く貧しいふたりのボヘミアン・アーティストがお互いに刺激・支援しながら、アートの追求をしていく話で、とてもロマンティックでノスタルジック。ポエティックな青春物語といってもよく、映画化されてもおかしくはない。パティ・スミス自身のことばによれば、この本は日本語に翻訳されて出版される予定とか。

    冒頭に紹介した台詞は、”Just for Kids’の出版にあたってのインタビューで、スミスが語ったことば。ランボーに憧れた彼女は、詩作や作曲だけでなく、写真も撮るそうだが、アナーキーな外見とは対照的に創作について勤勉なアーティストである。

    http://nymag.com/arts/music/profiles/63035/

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    ブロークバック・マウンテン (3) Brokeback Mountain (2005)

    ”I always like to try and bare my soul a little bit. I think it’s therapeutic.”

    (日本語訳)
    ぼくは、いつも自分の心をちょっとさらけだそうと努力してる。それは癒し効果があると思う。


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    『ブロークバック・マウンテン』のDVDには、特典として映画監督、出演者、脚本家などのインタビューが含まれている。ここに登場するヒース・レジャーは、ショートカットに、口ひげとあごひげ、濃いシェイドのサングラスで、ちょっとグランジ・ロッカーふう。『ブロークバック・マウンテン』で演じたカウボーイとは似ても似つかない。いつ撮影されたのか不明だが、この作品で共演して親しくなって娘をもうけたミッシェル・ウィリアムズ(彼が演じたエニスの妻役)について、「彼女との仕事は楽しかった」とうれしそうに語っている。

    演技のスタイルは時代とともに変わり、昔の映画に登場した映画俳優たちの演技は芝居がかって感じたりするものの、偉大な俳優に共通するのは、男優であれ女優であれ、vulnerability (繊細さ、傷つきやすさ、もろさ)が感じられることである。

    『ブロークバック・マウンテン』の主人公のひとり、カウボーイのエニス役のヒース・レジャーも例外ではない。経済的、社会的な理由から、そして恵まれない生い立ちから、人生のオプションが少なく、自分が欲することをするのはあきらめているワーキングクラスの男の抑圧感や孤独を切々と演じている。

    (ちなみに、エニスと、エニスの恋人ジャック(ジェイク・ギレンホール)との違いのひとつは、ジャックが、義理の父親のビジネスを手伝ってそこそこのミドルクラスになるのだが、エニスはずっと雇われカウボーイのままだったということである。どうして、もっと頻繁に会えないのかとジャックにせめられるが、生計をたてるだけで精一杯のエニスにとって、休暇を取るのは大変なことなのだ。トレイラー・ハウスに住み、バーで声をかけてきたウェイトレスに仕事のことを聞かれ、冗談なのか本当なのか、“今日は牛の去勢をしてきた”と答えている)

    この映画が公開後は、彼の演技をマーロン・ブランドのそれに比較する人も多かった。ダニエル・デイ・ルイスは、『ゼア・ウィル・ビー・モア・ブラッド(There Will Be More Blood)』の演技で、2008年に米国俳優協会賞を受賞したときに、その年の1月に急死したヒース・レジャーの『ブロークバック・マウンテン』での演技を絶賛し、賞を彼に捧げた。

    冒頭に紹介したのは、特典DVDでのインタビューの中でヒース・レジャーが語っていることば。演技することを”therapeutic (癒し効果がある)”と言っているが、皮肉なことに、彼が2008年1月、ニューヨークで処方薬の誤った大量服用で事故死したとき、それほどの疲労をもたらしたのは『ダーク・ナイト』の悪役、ジョーカーを演じるのにのめりこみすぎたためと言われた(事実は不明)。

    いずれにしろ、今後の活躍が期待されていただけに、あまりにも突然の早すぎる死は残念としかいいようがない。

    あるインタビューで、“I never had money, and I was very happy without it. When I die, my money's not gonna come with me. My movies will live on - for people to judge what I was as a person. I just want to stay curious。(いつもお金はなかったけど、ぼくはすごくハッピーだった。死んだら、お金はもってゆけない。でもぼくの作品は残る。それでぼくがどういう人間か人は判断する。いつも好奇心を持ち続けていたい)と語っていた。

    ちなみに、以下はネタバレなので、ご注意。

    ジャック(ジェイク・ギレンホール)の死後、彼の実家を訪れたエニス(ヒース・レジャーは、クローゼットにふたりのシャツがひとつのハンガーにかかっているのを見つけ、形見としてもらって帰る。最後のシーンでは、自宅に戻ったエニスが、やはりひとつのハンガーにかかったふたりのシャツにいとおしげに触れる。ジャックのクローゼットにかかっていたときには、エニスのシャツの上にジャックのシャツが重なっていたのだが、エニスはジャックのシャツの上に自分のシャツをかけている。なかなか憎い演出である。

    また、エニスがシャツを触りながらつぶやく最後の台詞は、“Jack, I swear…(ジャック、誓って言うけど・・・・・・)”。さて、エニスはどうことばを続けるつもりだったか、それは観客の想像に任せることになっているが、この途中で終わった台詞が深い余韻を残している。


    ブロークバック・マウンテン (2) Brokeback Mountain (2005)

    (英語の台詞)
    We coulda had a good life together!

    (台詞の日本語訳)
    俺たち、いっしょに楽しく暮らせたのに


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    この作品で描かれている、愛し合っているのに、社会的な束縛や恐怖、罪の意識から、一緒に暮らすことはおろか、公に愛を表現することもできないという愛の形は、時代や場所を越えて普遍的。

    この台詞では、ジェイク・ギレンホールが演じているジャックが、いっしょに暮らそういう彼の誘いを断り続けてきたイニス(ヒース・レジャー)に怒りをぶちまける。

    口語なので、”could have”が”coulda”に省略されてしまっているが、“could have 過去分詞(~できたのに)“という仮定法過去完了の典型的な例。例文:We could have saved her (彼女を救うことができたのに)。He could have avoided the accident (事故を避けることができたのに)。

    息苦しいといってもいいほどのふたりの愛の舞台は、雄大なアメリカの西部の自然。美しい山々や大きな雲が流れる空のショットと登場人物たちのクローズアップを交互に使って、ダイナミックな効果を出している。

    ”儒教文化圏で育ったから、感情を抑圧している人々を描くのは得意“と語る台湾生まれのアン・リー監督が、きめの細かい演出で、繊細で感動的な作品に仕上げた。

    アカデミー賞作品賞こそ逃したが、この映画が批評家にも観客にも受けた理由のひとつは、出演者たちの好感度の高さとバランスのよさである。主演のヒース・レジャーもジェイク・ギレンホールも、荒っぽい筋肉ムチムチタイプでも、なよなよとした、見るからに女性的なタイプでもない。ストレートの男女が登場する恋愛映画の主役を務めることができるルックスで、幅広い層の観客にアピール。伏せ目がちで寡黙なイニスが”陰“で、イニスよりも自己表現をし、ふたりの関係についても積極的なジェイクが”陽“。

    ラブシーンもあるが、ゲイの性よりも、”許されない愛“にフォーカスしたところが、この映画を普遍的にした。

    (パート3に続く)

    ブロークバック・マウンテン (1) Brokeback Mountain (2005)

    (英語の台詞)
    Ennis: You know I ain’t queer.
    Jack: Me, neither.

    (台詞の日本語訳)
    イニス:言っとくけど、俺はオカマじゃない。
    ジャック:俺だって。


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    予告編へのリンク


    この作品が封切られてまもなく、エレベーターの中でふたりの男性の会話が聞こえてきた。ふたりともおそらく50代でストレート。「『ブロークバック・マウンテン』はすばらしい映画だと妻が大絶賛してたけど、どうも見る気がしないんだよね」「ぼくもそう。”ゲイのカウボーイのラブストーリー“の話と聞いて、ジョン・ウェインとジェームズ・スチュワートがキスする場面を想像した。ちょっと引けてしまう」

    ああ、かわいそうなふたり! ストレートの男たちにありがちに、男性同士の恋愛というと、ひどく猥雑なイメージを持ってしまっている。実は、『ブロークバック・マウンテン』は、愛の切なさについての普遍的な純愛物語だというのに。

    1963年のワイオミング州。放牧羊の世話を任された若いふたりのカウボーイは、美しく雄大な自然の中でふたりっきりの生活を送るうちに、愛し合うようになる。そして、その仕事が終わった後、各々の故郷に戻り、結婚して子どももできるのだが、お互いを忘れることができず、うしろめたい思いをしながら、時々、ふたりが初めて出会ったブロークバック・マウンテンで短い逢瀬をすごした・・・・・・。

    冒頭に紹介した台詞は、テントの中でふたりが初めて抱き合ったあと、翌日交わされる会話。寡黙で内向的なイニスを演じているのはヒース・レジャー。陽気なジャックを演じているのはジェイク・ギレンホール(米国では”ジレンホール“と発音されている)。ふたりとも、特にイニスが自分は同性愛者ではないと否定している。

    queer”は元々、同性愛者を意味する差別的な口語だったが、1980年代以降、一部の政治的にラジカルな同性愛活動家たちが故意に、挑戦的に、自分たちをそう呼ぶようになった。もちろん、このシーンは1963年なので、この台詞では「世間の人に軽蔑されているような人間ではない」とふたりは確認し合っているわけである。

    “ain’t”は口語でbe動詞の否定形。ここでは”am not”と同じ。

    自分が同性愛者であることを認めないこと、その自己否定、自己抑圧は彼らだけでなく、家族も深い悲しみに陥入れたのだった・・・・・・。


    (パート2に続く)




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    M. Yamakawa

    Author:M. Yamakawa
    ニューヨーク在住の翻訳家・通訳

     

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